不適切な人工保育と動物のエンターテイメント使用について

 

サンクチュアリ・プロジェクトは以下の理由で今回のカドリードミニオンにおける赤ん坊の取り扱いについて改善を求めます。

・母親が抱いていた赤ん坊を母親から取り上げるべきではない。

・チンパンジーの赤ちゃんをショーに使うべきではない。

・野生動物を擬人化してはいけない。

 サンクチュアリ・プロジェクトでは2004年の発足時よりチンパンジーをエンターテイメントに使うことについて問題提起してきました。エンターテイメントで使用されるチンパンジーは、母親や同種の仲間から隔離された状態になり、チンパンジーに負担を与えるようなトレーニング手法がたびたびとられてきたためです。2006年にはSAGA(アフリカ・アジアに生きる大型類人猿を支援する集い)が「チンパンジーのTVバラエティ等おける使用に関する要望書」を関係各所に提出しました。その後みなさんもよくご存じの「パン君」が2012年に研修生を大怪我させた事件が起こりました。同年にSAGAが「チンパンジーのTVバラエティ番組・ショーへの利用廃絶に向けて」という声明を発表しています。「パン君」はその事件以降、ショーを引退しました。チンパンジーのショーをする施設は減少の傾向にあるものの、その後も各地で続けられていました。

 このような経緯があるにもかかわらず、今回新たに生まれたばかりのチンパンジーの赤ん坊が母親から離され、エンターテイメントに使用されています。20159月にパン君とポコちゃんの間に誕生した「プリンちゃん」という赤ん坊は「弱っているように見える」という現場の判断で母親のポコちゃんが抱いていたにもかかわらず取り上げられ、人の手で育てられ始めました。通常チンパンジーの赤ん坊は24時間母親と一緒におり、その中で栄養を得るだけでなく、チンパンジーらしい行動の発達も促されます。実際、人工保育を経て成長した個体の多くが、適切な育児や交尾ができなかったり、社会行動の変容や異常行動などさまざまな障害をかかえています。またこの時期の親との安定した関係が、精神面の発達にも不可欠であることが知られています。動物を飼育するうえでは動物が動物らしく成育できるような環境を提供することは、動物自身の福祉はもちろんのこと、種の保存や環境教育、研究などの観点からも不可欠です。そのため、動物園などでは、チンパンジーがたとえ一時的に人工保育になったとしても、なるべく早くに母親に戻す努力をおこなうのが現在では当たり前となってきています。現在、生後間もない敏感な時期に、赤ん坊は写真撮影のため、多くの来園者の目にさらされています。このままの状況が続くと「プリンちゃん」の将来が大変危惧されます。特に今回の件はメディアでも大きく取り上げられているため、その影響力の大きさも懸念されます。

 サンクチュアリプロジェクトでは、今回の人工保育とメディア等で流布されている内容に疑念を感じています。一刻も早く、赤ちゃんを母親に戻すことを強く要望します。チンパンジーの赤ん坊が母親のもとでチンパンジーらしく成長することを願ってやみません。

 さらに、その動物に対しての正しい理解を広めることがメディアの責任ではないでしょうか。メディアの持つ影響力は計り知れません。チンパンジーをよく知らない多くの人は、受動的に目にする擬人化されたチンパンジーの子どもの姿を本来の姿と認識してしまう恐れがあります。こうした歪曲された姿が広まることは、チンパンジーやその他動物の扱い方に関する誤解を生むことにもつながります。チンパンジーを対象としたものだけでなく、動物に負担をかけ、擬人化した演出のエンターテイメントのあり方を見直し、動物本来の魅力を伝えられるような飼育・展示、報道がなされることを強く願います。

 

 下記にわたしたちサンクチュアリ・プロジェクトの「エンターテイメントに使用されるチンパンジーについて」の声明を掲載していますので、ぜひご一読ください。
http://chimp-sanctuary.org/oursanctuary/entertainment.htm

 

また、SAGASupport for African/Asian Great Apes(アフリカ・アジアに生きる大型類人猿を支援する集い)の声明文に、今回の件の経緯が記されています。
サンクチュアリプロジェクトではこの声明に賛同します。
http://www.saga-jp.org/


                          2016年2月 サンクチュアリ・プロジェクト事務局


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